2001年12月22日

オ−トマ車は怖い

 俺は新しもの好きだ。
 好きを通り越して新は真に通じるの信念に凝り固まっている。
 新しいものを追いかけ回して50年を越える歳月を過ごしてきた。
 信念というより信仰に近いだろう。

 しかし、何にだって例外はある。
 いくら新しいものでも厭で厭でたまらないものもある。

 いわゆるオートマ車はその最たるものだ。

 俺は、クラッチを踏んでシフトレバー操作をすることによって操縦感を味わうのが楽しみで車を運転しているんだ。
 操縦できるものが車しかない男の唯一の頼みをトルコン*なんかに奪われてたまるものか。
 また、クラッチがなくなってしまったために何の使い途もなくなってしまった左足の始未はどうしてくれる。
 人間は片方を遊ばせておくと、それにつられてもう一方の動作も鈍くなるものだ。
 両足を遊ばせて手だけで運転できるようにしなければ片手落ち(片足落ち??)というものだろう。

 そんな車に喜んで乗っている奴の顔が見たいと毒づいていた俺がオ−トマ車を運転する日がやってきた。

 もっとも、運転できるのは俺だけではないから運転しなければしないでも済む。
 しかし、運転しないで車に乗るのはもっと苦痛だ。
 しかも、その車は新発売ホヤホヤのセフィーロだ!!
 多少の犠牲を払ってもハンドルを握ってみたい。

 てな訳で、3月20〜22日にかけておろしたてのセフィーロに乗って能登半島巡りのドライブをすることになった。

*トルコン トルクコンバータ、自動的に変速を行うための装置

 畳と車は新しい程良い?
 セフィーロの内装は、これが日産車かと思われるほど快適だ。
 勝手にシフトチェンジするのが気に食わないが地を這うような安定した走りだ。
 周囲の明るざに応仁て自動的にへソドブイトが点滅するのも手間いらずだ。
 トンネルに入ると自動的にライトが点き、トンネルを抜けると自動的にライトが消える。
 おかげでトンネルを抜けた後スイッチを切り忘れたためにヘッドライトを点け放したままで走るタコな運転をしないてすむ。
 特にトンネルが多い北陸道では効果絶大だ。
 こんな自動化は大歓迎だ。

 飛び石連休から日程を一日ずらしたお蔭で車の流れも良い。
 北陸道を降りて和倉温泉へ向かう一般道はまるで貸切りだ。

 気特ちの良いワインディング道路で目の前にトローイ車が走っていては、ドライブの楽しみが苦痛に化けてしまう。

 こんな道路を単車かマニュアル車で走れたら最高だなと思いながらマイペースでワインディング道路を駆け抜けていると
鳥谷さん何してるの
と助手席のI君(車の持ち主)が呆れた声でいう。

 止めるとき以外はブレーキを踏むのが嫌いな俺は、オートマ車でも減速するときはDレンジから2レンジにシフトレバーを切り換える。
 すると一呼吸おいてタコメータの針がグーンと跳ね上がる。
 ナント!! 4速から2速に一気にシフトダウンしてしまうのだ!

 オートマ車のシフトレバーには1、2レンジにすることにより1、2速にすることはできても、Dレンジにするとトップ(3速)とオーバートップ(4速)との切り換えはトルコンが勝手に行ってしまい、シフトレバーのポジションで運転者がコントロールすることができない。
 このためオーバーップになっているときにシフトレバーを2レンジに落とすと4速から2速に一気にシフトダウンすることになってしまうのだ。
 シフトレバーのグリップの下にボタンがあるでしょう。
 それを押すとDレンジでもオーバートップにならないようにすることができるんですよ。
 長い上り坂のときなどに使うと速度が出てもオーバートップになってしまって息切れをしなくて済むんですよ。
 そして、もう1回そのオーバ−トップ解除ボタンを押すと元通りオーバートップに移ることができるようになるんです。
 なるほど、これが便利だ。オーバートップ解除ボタンを押すと4速から3速にシフトダウンし、もう1回押すと3速から4速にシフトアップする。
 ボタンを押してからシフトチェンジするまで一呼吸のマ(間)が空くのが難だがブレーキを踏むことを思えば我慢できる。

 カーブが見えたタイミングでオーバトップ解除ボタンを押すと、カーブにさしかかる寸前に3速にシフトダウノし、抜ける直前にボタンを押すと直線になってから4速にシフトアップする。
 好きになれないが少しずつオートマ車に慣れてきたようだ。

 道路に恵まれ、宿に恵まれ、天侯に恵まれ、いいことづくめで和倉、輪島、千里浜、東尋坊を巡った日程も終り東名を通ってゴーホームだ。
 東名も思ったよりは渋帯は少なく、俺が走っている追越し車線は時速百キロメートル程度で流れている。
 沼津のインターを過ぎた。楽しかったドライブ旅行も後1時間ほどでおしまいだ。
危ないexclamation×2
 突然、助手席から緊迫した声がする。
exclamation&question
 助手席の窓にクローズアップした大型トラックのタイヤを見て思わずハンドルを右に切る。

 フラーッと(車の)尻が振られ、中央分離帯が斜めになってフロントガラスに迫る。
 必至になってカウンタを当てるが車は左右に振られて態勢が立て直らない。

 ガツンと鈍い音をたてて左側のコンテナ車に体当りした。
 ダン・ダン・ダン激しい振動が車を襲う。
 中央分離帯の緑が万華鏡のように眼の前で回る。

 ガンガンと右手のドアが揺れる。
この野郎!ナンデ幅寄せしやがるんだexclamation
 鬼のような形相をした奴がドアを蹴っとばしている。
 ハンドルがヌルッとする。

だ。
 声がなかなか出ない。
 ボタンがとうめく。
 ヤカマシイ!表へ出ろ6
 ドアが開かない。
 しかし、ガラスが破れているので声は割れるように響く。

 鬼の顔がフェードアウトしていく。

 窓に白いヘルメットの顔がフェードインする。

 事故の原因がわかりますか?と口が動いた。

とっさにハンドルを切ったのは覚えている。
 しかし、なんで左側のトラックに寄っていったのかわからない。

 覚えていませんか?窓から覗き込んでいる口がまた動く。
 横のトラックに近寄ってしまったんで避けようと思って...、居眠りしたかしら?ロごもりながら答えると
居眠りのはずはないよ。ズーッと僕達としゃべっていたじゃないの!
 助手席にいたはずのI君がいつのまにか車の外に出ていて口をはさむ。
 じゃあボーッとしていたのかな?
 いや、チャント話しの筋は通ってたよ。
 島谷さんはシフトレバーに眼を落したときにハンドルを動かしてしまったんだよ。
???(何でシフトレバーに眼を落したんだろう)???
 島谷さんは、エンブレをかける準備のためにシフトレバーのオーバートップ解除ボタンを手深りしてたじゃない。
 ところが、なかなかボタンに手が触れなかったんでアレッといってボタンを探すだめにシフトレバーの方を覗き込んだんですよ。

 とにかく外に出ましょう。火がついたら危険です。
白へルメットの口を動く。

 車を取り囲んだ人がドアをこじ開けるのに手こずっているのが見える。
 手伝いたくても、頭が天井で押され、背中は椅子で押されて動きがとれない。

 メリメリッと音がしてドアが半開きになったようだ。
 動けますか?と外から声ががかる。

 鼻血が出ている以外は異常なさそうだ。*
 両足をドアの外に出してからドアをくぐり抜けた。

 目の前にラジエータが外れてボンネットがグシャグシャになった車がある。
 タイヤはハの字になって外れかけている。
 それにしもセフィーロってこんなに短い車だったけ??
 運転席のすぐ後ろにいびつになった後輪がある。
 潰れたトランクルームの後ろには前面がクチャクチャになって窓ガラスがない大型トラックが止まっている。

*実は鼻の骨が折れていて鼻がぶらぶらだった。
救急車で運び込まれた病院では鼻の手術ができないので翌日相模原の北里病院で手術を行った。
頭を打っているので脳が麻痺して痛さがわからなかったようだ。

頭に来たぜ、加害者扱いしやがって!
本当は、俺だって被害者なんだぜ!
 居酒屋のカウンタ‐に座っている男がまくしたてている。
俺の前を走っているセフィーロが突然蛇行を始めやがったんだ。
てっきり、隣のコンテナ車に嫌がらせをしてると思ってたら、そのコンテナ車にぶつかって跳ね飛ばされたんだ。
慌ててブレーキを踏んだんだけどもう間に合わないやね。
中央分離帯のガードレールに跳ね返されて宙を飛んでいるセフィーロはフロントガラスの真下にいるんだ。
グチャッとトランクが潰れて前にスッ飛んでったね。

そりゃ、前の車が蛇行を始めたときすぐにブレーキを踏んでりゃ追突しないで済んだかも知れないさ。
しかし、ゾクやスジ者が路線トラックにイヤガラセして追越し車線でジグザグ運転すろのは珍しいことじゃないんだ。
その度に急ブレーキを踏むわけにはいかね−だろ。
追越し車線でそんなことをしたらどうなる。
その車とつるんで走ってる仲間の奴等にどんなインネンをツッカケられるかわかったもんじゃネーゼ。

ぶつけられた横のトラックだってイヤガラセだと思ってたからシカトしてよけなかったんだろ。
俺だってイヤガラセなのか尻を振られたのかわかるはずないじヤねーカ。

それなのに追突の原因は、速度違反*だ、前方不注意だ、追突した車に重傷者**が出たから業務上過失障害だ、とスッカリ悪者扱いだ!

俺だって、ぶつけたくてぶつけた訳じやねー。
前の車がシッカリと運転さえしてくれりゃ追突なんがするわきゃねーんだ。
だいいち俺が追突しなくたって時速百キロメートルで走ってる車が横のトラックやガードレールに跳ね飛ばざれりゃ怪我人が出るのが当り前で、生きてる奴がいるのが不思議なぐらいナンダ。
ヤツラの怪我はホントは俺のせいじゃねーンダ。

あんな車の巻き添えを喰ったおかげでコチトラの車だって前はグチャグチャざ。
俺が怪我をしないで済んだのが不思議なぐらいさ。
おまけに、業務上過失障害容疑で警察暑に引っ張られて取調ベだ何だで半日以上つぶされて全くエレェ災難さ。...
 盃を傾けながらトラック野郎の愚痴はいつ果てるとも知れない。

*トラックは、最高速度が時速80キロメートルと規定されているので、時速100キロメートルでは、制限速度20キロメートルオーバーということになる。
**後部座席のK夫人が足の複雑骨折で1年入院、助手席のI君は鎖骨の骨折で全治3ヶ月。

 鳥谷さん、ホントに覚えていないの救急車の中でI君がいう。

 島谷さんはハンドルを10時10分の形で持っているでししょう。
 シフトレバーを覗き込んだときにかちだと一緒にハンドルが動いて左に走っている路線トラックに寄ったんですよ。
 思わず危ない!と大声を出したので島谷さんはびっくりしてハンドルを切りすぎて尻を振らしてしまったんだけど。

 4月25日にNHKで放映されたトライ&トライによると時速100キロメートルで走行しているときの安全なハンドル操作角度は7度(指3本分)までだそうだ。
 パワーステアリングは、動きが軽い上に、ハンドルの遊びが少ない。
 ハンドルをグイッと動かせは20〜30度は動いてしまう。
 これでは尻が振られてしまうのは当然だ。
 俺はパワステのないハンドルの重い車に乗っていた期間が長いのでハンドルを10時10分から9時15分の形で持つ習慣がついている。
 この姿勢がいちばんハンドルを操作しやすいからだ。
 しかし、ハンドルの軽い車でハイウェイを走るときは、からだの動きに連られてハンドルが動かないように、ハンドルの一番下を指で軽く抑えているのが無難なようだ。
 また、からだを大きく動かさなければならないときはハンドルから手を離して車の直進性に委ねた方が安全かも知れない。

 それにオートマ車に乗ったら走行中はシフトレバーを触らないのがスジらしい。
 運転者がいくら注意されてもブッ飛ばして運転するので、スピードを落させる為に助手席の人問がシフトレバーを2レンジに動かしたら車が転がった死亡事故もあるそうだ。

 オートマ車は、高速走行に入ったらエンジンブレーキは使うものではないらしい。
 最近、パカパカとパカみたいにブレーキランプをヤタラと光らせる車が多くなったのはオートマ車が多くなったためなのだろう。
 エンジンブレーキが使えずブレーキを踏むしか減速の方法がないのでは安全運転とはほど遠かろう。

 自動化は反対というつもりは毛頭ない。
 しかし、現状のような中途半端なオートマチックなら、マニュアル車の方が遥かに安全だろう。
 ブレーキペダルと運動して適正なエンジンブレーキがかかるような自動化まで進歩しない限り、マニュアル車でなければ運転席には座りたくまいね。


1989年慶應義塾大学囲碁部発行石の音16号から補筆転載)



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